ラテン音楽の「クンビア」って?
ラテンアメリカ諸国を旅していると、食堂、バスやタクシーの中など街中のそれこそ至る所で、トランペットやパーカッションなどいわゆる「鳴り物」をふんだんに使い、底抜けに明るいがときに哀調を帯びたような、そんなメロディーの音楽を耳にすることがよくある。何だか心に響くようないい曲なので、CDを買いたいと思いながらもそれが一体どんなジャンルの音楽なのか長いことわからなかったが、偶然タクシーの運ちゃんから、ラジオから流れてくるそれらの曲が「クンビア(Cumbia)」というジャンルのものであると教わった。
で、さっそくCDを買いにそそくさと出かけていったわけだが、最初に入った店で「クンビアある?」と聞いたところ、店のオバサンが目を吊り上げて「Cumbia? No!」との答えが。あれだけ街中で流れているのにね、と半ば怪訝に思いながら探し回り、広場近くの露店で見つけたクンビアのCDを見て、さっきのオバサンのつれない態度に何となく納得がいったような気がした。そこで売られていたCDのほぼ全てが、素っ裸か、あるいはそれに近い衣装を着けたオネエサン方のイラストのジャケットで纏われていたのだ。どうもこのクンビアという音楽、例えば韓国の「トロット」やインドネシアの「ダンドゥット」、中近東やその周辺の国々で人気のいわゆる「レバノン演歌」や日本の演歌などのように、上流階級の人は目を顰めるが庶民には人気のあるような、男女の間での惚れた腫れただの、別れとか縺れみたいなものを好んで題材に取上げて歌い上げるタイプの、かなりベタなジャンルの音楽であるらしい。
どこの国でも大抵そうだが、この手の音楽はいわゆる庶民階層に根強い人気があり、社会の全てで受け入れられているわけではないにせよ、どこでもしっかりと社会に根を張って生き延びて行くような、エネルギーというか力強さを持っている。このクンビアにしろ、発祥はコロンビアらしいが、同じスペイン語を話すラテンアメリカ諸国に広く伝わり、今や「Cumbia Argentinas」や「Cumbia Bolivianas」など他の国バージョンのものも売られているし(ただし国によっては、「これってフォルクローレじゃないの?」といいたくなるようなメロディーラインのものもあるが…)、それに一流のアーティストの中にもクンビアの要素を一部取り入れて、より洗練された形でのヒット曲を世に送り出しているようなケースもあるやに聞く。
ここまで余すところなくラテンのソウルを表現したようなジャンルの音楽もないと思うし、ラテンアメリカを訪れる機会があったら、ひとつ買い求めてはいかがだろうか?ジャケットの絵柄からすると買うこと自体ちょっと気恥ずかしいかもしれないが、でも本当にバカにしたものでもありませんよ、この「クンビア」というジャンルの曲。
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