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松本清張の文学を訪ねる

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松本清張の文学を訪ねる

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これは「旅のテーマと主な目的地」の記事です。( → 芸術作品の舞台を巡る へ戻る)
東京駅丸の内(点と線)

この記事では昭和を駆け抜けた小説家・松本清張に関わる各地を紹介する。


分かる[編集]

時刻表

松本清張の『点と線』は時刻表トリックの草分けなどとされることが多い。実際にはそれ以前にもあったようだが、大々的にこの手法が有名になったのはやはりこの作品からのようだ。さてその『点と線』では時刻表トリックが使われているだけでなく、犯人がそれを思いついた理由もほのめかされている。それはこのコラムの左にあるような清張自身の体験とも似ていて、時刻表を見るのが鉄道の時間を調べるためではなく、ただそれを見て様々な駅での光景を思い浮かべることにあるようだ。乗り換え案内サイトの隆盛で時刻表を見ることも少なくなってしまったが、そんな使い方も面白いのかもしれない。もちろん殺人はなしで。

歴史・地理好き

文芸春秋刊・松本清張全集9『黒の様式』巻末の丸谷才一の解説によると、清張とその父と二代にわたって歴史・地理が好きだったらしい。清張の少年期から父は講談物がネタとはいえ様々な歴史の場面を読み聞かせていたという。また清張が父母を伴って東京に移住した際には、家族の心配をよそに父は一人で東京めぐりをしていたらしい。清張自身も歴史や地理を好み、奈良や京都の古刹あるいは九州の遺跡など何度も訪ねている。推理小説を読んでいると筋の方が重要なのでつい読み流してしまうが、土地の記述もけっこう多く、ウェブで検索をかけると土地の人がそれを引用して思い入れたっぷりに書いているのを時々見つかる。

松本清張は推理小説・歴史小説・伝奇小説・モデル小説など幅広い執筆をした多作の小説家で、いくつものベストセラーを出し、その時代の話題となった作品も多い。主に昭和初期から中期を背景にしているが、ここ数年でも多数の作品がテレビドラマ化されるなど時代に色あせていない。

作者自身によると、少年期には旅行がままならず教科書の風景版画を見て様々な土地を心に描いたとのことで、いろいろな作品で特定の地域が重要な舞台となっている。特に作者自身の故郷である北九州と父の故郷である山陰地方また上京後に居住していた東京都杉並付近は複数の作品に登場する。

作者はリアリティを追求したことでも名高く、そのために綿密な取材を重ね、作品中の記述が実際の風景に合致していることも多い。また作品の中にはわざわざ地図が添えられていることも少なくない。そこで清張作品で有名になった観光地も実際にあるそうだ。この記事では松本清張の作品に登場する舞台をめぐっていく。


作品別[編集]

この項はそれぞれの作品をその中で舞台となる地名を中心に紹介する。よって著名な作品であっても特定の土地が存在感を持って出てこない作品は紹介していないし、紹介の仕方もストーリーには焦点を当てていない。

あ行[編集]

  • 青のある断層 — 田舎から出てきた無名の画家が銀座の一流画商に売り込みに行く。ふだんはそんなものは相手にもしない主人は、たまたまそれを買い取ることにする。画商がかつてパトロンとなって育て大家となった画家は才能が枯渇し、絵が描けずにいた。伊豆船原温泉で画商は大家に無名画家の絵を見せ、御狩場焼を相伴する。  所在  伊豆市
  • 赤いくじ — 太平洋戦争末期、高敞に駐屯する軍の高級軍医と参謀長が夫を招集された美しい夫人に横恋慕し、茶番じみたさや当てをするも、夫人の高尚さに手を出せずにいた。いよいよ敗戦となったとき、高級将校たちは勝者たる米軍に提供する慰安婦をくじで決めることにする。清張が終戦時に韓国に軍人として観察した将校たちの様子が元になっている。  所在  韓国全羅北道
  • 芥川龍之介の死 — 『昭和史発掘』所収。昭和2年7月24日、小説家・芥川龍之介は田端の自宅で服毒自殺した。自殺の前、洋画家・小穴隆一と近所の主治医・下島勲には他の文学上の友人には漏らさないようなプライベートのことも話していた。  所在  東京都北区
  • 熱い絹 — タイのシルク王、ジェームズ・ウイルバーの失踪と、軽井沢の別荘で見つかったウィルバーの妹の絞殺体、そしてカメロンハイランド(キャメロン高原)の森林で山岳民族に斬殺された日本人観光客。一見関係なさそうなこれらの事件・事故が、別荘の部屋に残された1枚のスナップショット、軽井沢の別荘の壁に掛けられた蝶の標本、古代クメール美術のレリーフ一などのわずかな接点からつながってゆき、それが次第に壮大な結末へと展開していく。  所在  マレーシアキャメロン高原
旧天城トンネル
  • 天城越え — 短編集『黒い画集』収録。家業の鍛冶屋を嫌い母に叱責された少年は、家出し下田から静岡の兄の元へ歩いて向かう。その途中、旧天城トンネルで年上の女性と出会う。作品の冒頭ではやはり主人公が天城峠を逆向きに越える川端康成の『伊豆の踊子』が引用されている。  所在  伊豆市
  • アムステルダム運河殺人事件 —  『黒い福音』所収の中編。オランダ・アムステルダムの運河でスーツケースに入ったバラバラ死体が見つかった。中の下着から日本人であることが推定され、その頃行方不明になっていたベルギー・ブリュッセルの商社員であることが濃厚になった。日本から来た素人探偵二人が謎に迫る。二人は運河のボートハウスやアンネ・フランクの家を訪れたり、車でハーグやベルギー国境やブリュッセルを回り、その光景が描かれる。実際の事件をもとに作者の創作を交えて書かれている。  所在  オランダアムステルダム・ベルギーブリュッセル
  • 粗い網版 — 出口王仁三郎の大本教に対する特別高等警察の内偵をモデルにした小説。福岡にいた特高刑事は警保局長の命令で京都に転任し、琵琶湖畔の石山寺近くにアジトを構え、密偵を入れて工作を展開する。  所在  大津市
  • 石田検事の怪死 — 『昭和史発掘』収録。東海道線の大森蒲田間で東京地裁検事局の石田検事が怪死した。石田検事は政権までもう一歩のところにいた政友会を吹き飛ばしかねない事件を追及しており、また石田検事の自宅の市ヶ谷の二重騎町付近には政友会と近い右翼団体の関係する施設があった。  所在  東京都新宿区
  • 田舎医者 — 短編集『影の車』収録。若い時分に出奔した故郷の山陰に貧しさから帰れなかった父は息子にその懐かしさを都度都度語っていた。そして息子はある出張のついでにその故郷に立ち寄ることになった。遠縁の医師の家を訪問するが、往診に行った医師は帰ってくるはずの時間になっても帰ってこない。  所在  島根県仁多郡
  • 厭戦 — 清張の郷里・小倉近くにある佐平窟という遺跡にまつわる話。秀吉の朝鮮出兵から逃げ帰り磔にされたとされる佐平の伝説を、自らの太平洋戦争時の朝鮮駐屯に重ねる。  所在  北九州市
  • 鴎外の婢 — 短編集『黒の図説』収録。文芸評論家が森鴎外の小倉時代の女中について調べる中で、土地の郷土史家による福岡県京都郡付近に古代の帝都があった説や、女中の孫の行方不明事件に関わっていく。郷土史家による付近の古い地名を丹念に追っている。また清張は鴎外について書いたものが多い。  所在  福岡県行橋市  

か行[編集]

芸術・絵画

清張は小説家になる前に印刷所や新聞社に勤め広告用の絵を描いていた時期がある。そのためか作品中に各地の風景描写が多く、話の筋を受け止める場となっている。執筆から時を経て全く変貌している場合もあるが、いまでもかかれたように残っているところもある。また色のついたタイトルも多い。一例をあげれば赤・紅・青・蒼・黄・白だが特に多いのは黒だろう。黒は一般人の心の中はもちろん社会や権力の闇を描くのにこの色が使われ、見ても何でもない街角が黒い犯罪の舞台になっている。また画家や芸術家に関する作品も多い。芸術家についてのフィクションに加えて、ノンフィクションがいくつもあり、とうぜん主人公たちはいろいろな場所に訪れる。

  • — 伯備線の途中、新見の街から東の方に勝山という町があり、さらにそこから北に12キロの山麓の温泉に落ちぶれた人気通俗作家がやってきた。温泉宿の主人はかつて作家のゴーストライターとなり人生を狂わせていた。  所在  真庭市
  • かげろう絵図 — 長編時代小説。江戸11代将軍で将軍職を子の家慶に譲りながらも大御所として実権を握っていた徳川家斉の晩年を史実と虚構を交えて語る。家斉の愛妾お美代やその養父・中野石翁、実父で日蓮宗の僧・日啓、取り巻きの水野美濃守・林肥後守・美濃部筑前守と、家慶配下の水野越前守忠邦・脇坂淡路守らとの闘争を脇坂の探偵である旗本・島田新之助と島田又左衛門の活躍を通して描く。舞台は江戸城西の丸・石翁の屋敷のあった向島・日啓の感応寺のあった目白・お美代の娘の嫁ぎ先の本郷加賀藩屋敷・旗本屋敷街の麻布など。  所在  千代田区墨田区豊島区文京区港区など
  • — 『別冊黒い画集』収録の短編。山梨県塩山から群馬県伊勢崎まで高速道路を建設する計画が持ち上がった。しかしどうしても用地買収に応じない地主がいる。  所在  甲州市
  • — うだつの上がらないサラリーマンの主人公は相続した都下多摩の土地に道路建設のための買収話があっても頑として応じない。あとがきに国分寺・小平・田無など歩いて見た田園風景とある。  所在  東京都北多摩
  • 聞かなかった場所 — 主人公は出張中に妻が心筋梗塞で急死したと連絡を受ける。妻が倒れたのは代々木山谷で、なぜそんなところに妻が行っていたのか主人公は調べ始め、長野県南部の富士見へも向かう。代々木に山谷という地名があり、連れ込みホテル街だった頃の話。  所在  東京都渋谷区、長野県富士見町

考古学

清張は小説家になる前の朝日新聞社員の時代に考古学好きの上司の影響を受けて九州各地の遺跡を回り、戦後すぐのころは箒売りの商売がてら奈良や京都も廻った。考古学に題材を取った作品が多数あるし、考古学者について書いたものもフィクション・ノンフィクション合わせていくつもある。考古学自体にも多数の論文を渉猟して自説を述べるなど深く携わった。出雲・諏訪・高崎・新潟その他各地の遺跡を訪ねている。

  • 菊枕 — 女流俳人・杉田久女をモデルとした小説。小倉に住み、夫がうだつの上がらぬ中学の美術教師であることに劣等感を持つ主人公は、俳句に打ちこみ高浜虚子を偶像化していく。清張は小倉にすんでいた。  所在  北九州市
  • 北の詩人 — 金日成により粛清された韓国の詩人・林和(イムファ)について北朝鮮での裁判記録を元に描く。終戦直後のソウル市を主人公が文化活動のため走り回る。  所在  ソウル
  • 北原二等兵の直訴 — 『昭和史発掘』所収。被差別部落に生まれ徴兵された軍でも差別を受けた北原二等兵が名古屋練兵場での閲兵式において昭和天皇への直訴に及んだ記録。  所在  名古屋市
  • 球形の荒野 — 太平洋戦争の終戦工作を背景にした長編小説。奈良の唐招提寺の芳名帳に、寺回り中の女性は外国で病死したはずの外交官の叔父の筆跡を見る。その話を未亡人や遺子である娘に話すと、娘と結婚することになっている新聞記者は興味を持って調べ始める。しかし当時の関係者は口を固く閉ざして何も知らせようとしない。その中で関係者が殺され、記者は品川・大和郡山・松本浅間温泉・蓼科と調べ、娘は手紙に誘われて京都南禅寺を訪れる。最後は三浦半島の観音崎でクライマックスを迎える。  所在  奈良市京都市横須賀市
  • 梟示抄 — 征韓論に敗れ佐賀の乱にも敗れた江藤新平は政府軍から逃れ鹿児島・宇奈木温泉に西郷隆盛を頼るが意を同じくすることはできなかった。日向から海路で宇和島に向かい、さらに険しい山道を歩いてかつての同志に会いに土佐高知に至るが自首を勧められる。さらに大阪に向かう途中、安芸郡甲の浦でついに捕えられる。  所在  宇和島市、高知県安芸郡東洋町
  • 霧の旗 — 20歳の女性が強盗殺人容疑の兄の無実を信じ、丸の内に事務所を構える高名な弁護士に弁護を依頼するため九州から上京した。しかし弁護士は多忙であることや依頼人に支払いの見込みがないことからこれを断ってしまう。容疑者は獄死し、依頼者の女性は上京し銀座のバーで働くことになった。丸の内にまだレンガの建物が並んでいる頃の光景が描かれる。  所在  東京都千代田区
  • 黒の福音 — 実在のBOACスチュワーデス殺人事件を元に、作者の創作を交えて話が展開する。事件に対する評論『スチュワーデス殺し論』が併せて収録されている。そのため架空の名前や地名が使われているが、実際の事件と対応させるのは易しい。地名についてたとえば中央線O駅(荻窪駅)・玄伯寺川(善福寺川)・高久良(高井戸)などである  所在  東京都杉並区
  • 絢爛たる流離 — ある3カラットのダイアモンドが持ち主を変えながら、ダイヤモンドもそれを手にした人々も流離する様を描いた短編集。昭和の初めから安保まで戦争の時代を突き抜けた世相が背景にある。  所在  筑豊・韓国・湘南など。
  • 交通事故死亡1名 — 客に急かされて狭い道でスピードを出していたタクシーは、前を走る車の急停車にハンドルを切り死亡事故を起こしてしまう。五日市街道を吉祥寺から府中方面に向かっている。  所在  武蔵野市
  • 古代史疑 — 魏志・倭人伝について様々な学説を渉猟しつつ、邪馬台国九州説を導いている。  所在  九州各地
  • 古代探求 — 古代史疑を継いで初めにいくらか魏志・倭人伝を論じたのちに、古事記・日本書紀について広範な検討を加える。付論において高松塚壁画や聖徳太子さらに万葉や群馬の古墳群などを扱う。  所在  出雲市奈良県高崎市など
  • 湖畔の人 — 人と打ち解けない新聞記者は諏訪に転勤となり、かつてこの地に流されたやはり人から愛されなかった徳川家康の子・松平忠輝に思いを致す。  所在  諏訪市

さ行[編集]

時代小説

清張は講談を聞かせた父の影響か多数の時代小説も書いている。時代は江戸と明治が目に付くが、戦国時代や古代や昭和初期などの作品も多い。舞台となるのは江戸・東京が多いが、奈良・京都・佐渡・大阪・長崎そのほか多数の土地が扱われている。中でも甲府と諏訪は好みのようでいくつかのフィクションの作品に登場している。

  • 西郷札 —  松本清張の処女作にして懸賞小説として3等を取った作品。佐土原藩士の樋村雄吾は西南戦争で西郷軍に従うが、可愛岳で負傷し脱落する。東京に出た後に車夫となり、客として乗せた官僚の指示で本所清住町の邸宅に行くと、その妻となっていた義妹と再会する。雄吾の恩人の友人がひと儲けを企み、西南戦争の際に軍票として発行された西郷札の補償の運動をするため官僚へのつなぎを求めると、雄吾は彼を新富座で引き合わせることになる。  所在  宮崎県延岡市、東京都中央区新富
  • 彩色江戸切絵図 — 江戸の時代物の短編集。町人たちの物語なので舞台は下町が多い。日本橋・根津・湯島・神奈川県の大山詣でなど。  所在  東京都中央区文京区伊勢原市
  • 彩霧 — 長編。銀行員が不正取引をネタに自社を脅迫した。これに巻き込まれた友人の主人公は銀行員を追いかけるうちに静岡に向かう。伊豆半島西部で事件は展開する。主人公は土肥温泉に向かおうとするがタクシー運転手から道が悪いと嫌がられ、代わりの船原温泉で御狩場焼なるイノシシ料理を堪能しようとするがありつけず、修善寺や長岡温泉にも足を延ばす。  所在  伊豆半島
  • 相模国愛甲郡中津村 — 主人公は神田の古本屋で老人と知り合い、以前に興味を持った明治11年の藤田組贋札事件の話を聞く。表題の場所の老人の家を訪ねていくと、この事件の犯人とされた人のかつてこの事件の犯人とされた熊坂長庵の住んだ地であった。あとがきで清張が大川周明について調べたときにこの熊坂の家を大川が買って住んでいたことに驚いたとある。  所在  厚木市
  • 砂漠の塩 — 妻のある男と夫のある女が不倫の果てに、誰も知られないところで心中しようと海外へ向かった。男は出張に見せかけ香港を素通りし、女は団体旅行でパリに行くがやはり素通りし、二人はエジプトのカイロで落ち合う。カイロにしばらく滞在した後、飛行機でベイルートに向かい、そのまま陸路ダマスカスへ行く。そこにまたしばらく滞在した後に、再び陸路でバクダッドに向かう。カイロでは死者の町にダマスカスに行く途中でバールベックにバクダッドへの道でルトバの町にそれぞれ立ち寄る。まだ海外旅行が珍しかった時代の話となっている。  所在  エジプトカイロ・シリアダマスカス
  • 佐分利公使の怪死 — 『昭和史発掘』所収。昭和4年11月28日夜、帰朝中の駐支公使・佐分利貞男が箱根のなじみの富士屋ホテルに現れた。翌日に東京に帰るからと朝早く起こして床屋を呼ぶように注文して休んだが、翌日に係が声をかけても佐分利は起きてこない。そこで係が部屋を空けると頭をピストルで撃ち抜かれて死んでいた。公使は親中国派として協調外交の幣原外相の期待を受け、逆に右翼団体や国粋主義者からは嫌われていた。  所在  神奈川県箱根町
  • 皿倉学説 — つまらない女に引っかかってしまった生理学の教授は麻布の自宅にいられなくなり、井之頭で女と同居する。その生活の中で奇妙な論文に引き込まれていく。老教授は女から疎んじられ井之頭付近を歩いたり、思索のために九十九里の片貝に旅行する。  所在  東京都三鷹市、千葉県九十九里町
  • 三・一五共産党検挙 — 『昭和史発掘』所収。大正15年(昭和元年)の暮れに山形県の五色温泉・宗川旅館において非合法化された共産党再建の秘密会議がもたれた。翌年その情報をつかんだ特別高等警察はさらに翌年の昭和3年共産党員の一斉検挙に踏み切った。  所在  米沢市
  • 時間の習俗 — 点と線の続編となる長編推理小説で、これも交通公社の雑誌『旅』に連載された。相模湖畔で交通業界紙記者が殺された。一緒にいた女は失踪する。タクシー会社専務・峰岡が容疑者として浮上するが、死亡推定時刻に峰岡は福岡出張中であり、門司市の和布刈神社の神事を見物していた。事件は名古屋、太宰府近辺の水城・都府楼址、宗像市の鐘崎 、茨城県潮来市のあやめ祭りと展開する。  所在  北九州市門司区
  • 事故 — 『別冊黒い画集』収録の中編。トラック運転手が居眠り運転である住宅の門を壊してしまった。運送会社の担当者は被害者宅と折衝したが、意外に安い賠償で済んでしまう。交渉過程とトラックがそんな道を通るはずがないことに割り切れなさを残しているなか、しばらくして事故を起こした運転手が山梨県小淵沢近くの断崖で死体で見つかった。同じころ甲府の昇仙峡近くの千代田湖畔で興信所の女性調査員がやはり死体で見つかった。  所在  山梨県北杜市甲府市
  • 私説・日本合戦譚 — 戦国から明治初期までの日本のさまざまな合戦を小説家の視点から描いた短編集。武田勝頼と織田信長の長篠合戦(長篠・設楽原)、信長と浅井・朝倉氏の姉川の戦い、明智光秀と豊臣秀吉の山崎の戦い、武田信玄と上杉謙信の川中島の戦い、毛利元就と陶晴賢の厳島の戦い、秀吉による島津氏への九州征伐(戸次川・高城)、天草四郎の島原の乱、徳川家康と石田光成の関ヶ原の戦い、西郷隆盛の西南戦争(熊本・田原坂)が扱われる。  所在  愛知県新城市、滋賀県長浜市長野市、広島県廿日市市大分市、宮崎県児湯郡木城町、長崎県南島原市、岐阜県不破郡関ケ原町熊本市
  • 下山国鉄総裁謀殺論 — 『日本の黒い霧』所収の中篇。昭和24年に下山国鉄総裁が死体で発見された実在の事件について、GHQのG2下の工作機関による謀殺と見て推理を進める。下山が失踪前に運転手に命じて東京駅東側から日本橋・神田周辺の国鉄本庁や三越・白木屋あたりを走り回ったことや、列車に轢断された姿で見つかった北千住・綾瀬間の描写が詳しい。事件現場にはいまも追憶碑がある。  所在  東京都千代田区中央区足立区
  • 種族同盟 — 都下の多摩川沿いの渓谷でバーのホステスが殺された。警察は近くの旅館の使用人を逮捕し、国選弁護人が彼を弁護することになった。地名などはイニシャルになっているが青梅だと思われる。  所在  青梅市
  • 潤一郎と春夫 — 『昭和史発掘』所収。昭和5年、文豪・谷崎潤一郎は長く不仲だった妻を友人の佐藤春夫に譲ったことがセンセーショナルに報道された。それまで二人は小石川や本郷あるいは駒込などに家があって交流が始まり、谷崎は小田原や横浜さらに六甲に転居した。  所在  東京都文京区
  • 証言の森 — 昭和13年に東京中野の住宅街で主婦が殺された。夫が犯人として挙げられるが、当人の供述は二転三転する。  所在  東京都中野区
  • 情死傍観 — 阿蘇山の噴火口への自殺者を引きとめる小屋の老人がたまたま事情で身投げを傍観してしまうフィクション。小説の中に小説がある構成になっている。  所在  阿蘇市
  • 小説帝銀事件 — 昭和23年に豊島区の椎名町で起きた帝銀事件について731部隊の関与を疑い、死刑判決の確定した平沢貞通死刑囚が犯人であることは疑わしいという立場から書かれている。  所在  東京都豊島区
  • 小説日本藝譚 — 日本美術史上に残る十人の芸術家について小説家の視点から描いた短編集。本阿弥光悦が徳川家康から拝領した鷹峯や止利仏師の奈良の寺院などの光景が描かれる。  所在  京都市奈良市
  • 象徴の設計 — 明治の軍人山縣有朋を主人公とし軍人勅諭の作成や自由民権運動潰しが描かれ、中では椿山荘として今も残る庭と屋敷を建てたことに触れられている。  所在  東京都文京区
  • 白鳥事件 — 『日本の黒い霧』所収の中篇。1952年に起こった実在の事件についての裁判の経緯を記す。札幌で共産党対策をしていた警備課長が自転車で走っているところを射殺された。この事件の裁判が、事件とほとんど関係のない北海道の共産党幹部を陥れるために使われたとの視点から描く。事件はほとんど札幌市街および近郊で展開する。  所在  札幌市
  • ゼロの焦点 — 『太陽』・『宝石』に連載された長編。新婚早々の夫が仕事先の金沢で失踪した。見合いで結婚した夫人は夫のことを何も知らないことに気づき、金沢での捜索を開始する。甲府を通る新婚旅行から、金沢周辺で縦横に事件は展開し、夫が過去にいた立川にも関わってくる。能登の海岸には作品を記念した清張の歌碑もある。  所在  石川県金沢・能登金剛・鶴来・和倉温泉など
  • 戦国権謀 —  徳川家康に仕えた本多正信・正純父子の話。正信は三河時代に一向一揆に従い家康を裏切るが、本能寺の変の際に帰参する。有能な父子は大御所として駿府にこもる家康の下で政治を宰領し、大坂城の内堀埋めの謀略にもかかわる。将軍が秀忠の代となり正純は宇都宮の地を拝領するが、秀忠や土井利勝に嫌われ、出羽の国・由利本庄や横手に流される。  所在  宇都宮市、秋田県由利本荘市横手市
  • セント・アンドリュースの事件 — 『黒い福音』所収の短編。主人公の企業経営者は友人たちを誘ってゴルフ発祥の地と言われるイギリス北部セント・アンドリュースに旅行する。イギリスで主人公は仲間たちに怪しげなアジア系外国人から付け回されているのではないかと打ち明ける。エジンバラからの鉄路や海岸の断崖の情景が描かれ、簡単な鉄道路線図と当時の時刻表の抜粋も添えられている。  所在  イギリス北部セント・アンドリュース
  • 喪失の儀礼 — 東京の大学病院の内科医が、名古屋の学会出張中に殺されたが、事件の捜査は難航する。しばらくして東京の深大寺で経堂に住む外科医が殺され、この医師も同じ学会に行っていたことがわかった。名古屋と東京の刑事の捜査が進む。  所在  名古屋市・東京都世田谷区調布市
  • 遭難 — 短編集『黒い画集』収録の中編。銀行の同僚3人は信濃大町から鹿島槍ヶ岳に登山するが、途中で道を間違えて一人が遭難してしまう。助かったリーダーは遭難者の姉から連絡を受ける……執筆に当たってはベテラン登山家に集まってもらって話を聞き、さらに鹿島槍ヶ岳に慣れた登山家に先導されて実際に作者自身が登ったとのことで、現地の風景も描かれている。  所在  大町市
  • 象の白い脚 — 友人石田伸一の不慮の死の謎を調べにラオスの首都ビエンチャンを訪れた谷口。情報収集のため街を歩き回り、その過程で接点ができた、技術援助のためこの町に滞在する在留邦人や記者くずれの中年フランス人女性、中国系の運転手などとの交流を深めてゆく。そして周囲で起こる殺人事件などをきっかけに、次第に一見のどかなインドシナの田舎町にしか見えないこの町の持つ裏の顔、底なし沼のような闇に谷口自身が惹きつけられ、からめ捕られてゆく。いろいろな人間から得られる断片的な情報をつなぎ合わせていくうちに深い闇の中からおぼろげに浮かび上がってくる街の姿とその闇に住む者たちの人間模様。ただしそれを追いかける者たちに街は決して寛容なままではなかった。やがて谷口らを待つ報復とは…。内戦状態にあった当時、軍事顧問団であるアメリカのCIAとこの国の特権階級を結びつける環としてまことしやかに語られていた麻薬取引を題材に、小説という形を借りてこの国の闇の世界に迫った、ドキュメンタリータッチの物語。  所在  ラオスビエンチャン

た行[編集]

  • たづたづし — 官庁の課長である主人公は若い女と知り合い不倫の関係になったが、破局が訪れ長野の富士見に誘い殺すことにした。その後、諏訪や木曽福島を訪れる。あとがきによると女の家の周りはかつて清張が住んでいた上石神井をモデルにしているという。  所在  長野県富士見町、東京都練馬区
  • 断線 — 『別冊黒い画集』収録。女を騙す詐欺師まがいの男はとんとん拍子で出世するが、予想外の事態が起こり鎌倉でクライマックスを迎える。  所在  鎌倉市
  • 小さな旅館 — 娘婿の行いの悪さに業を煮やした主人公は、婿を始末することを考え江古田の連れ込み宿を買い取って死体遺棄の現場にし、相模湖でも工作をする。  所在  東京都中野区
  • — 師である著名学者の勘気に触れたためうだつのあがらない歴史学者は小さな郷土史の仕事をする。この中で見所のある女子学生をアルバイトに使うが、彼女は卒業後しばらくして故郷の九州に帰ってしまう。二人は平林寺で別れをする。裏に松平家の墓地のある雑木林の小道を二人は歩く。  所在  東京都新座市
  • Dの複合 — 『宝石』に連載の長編推理小説。売れない小説家が、旅行雑誌の編集者の求めに応じて民俗学の見地から日本の各地を旅していたが、その中で殺人事件が起こる。旅行先は羽衣や浦島また補陀落の伝説に沿って進められ、各地を旅行することになる。ストーリーが旅行雑誌の連載とその取材であるため、情景の描写が詳しい。京都木津温泉および網野町に始まり淡路島・明石天文台・和歌山淡島神社・静岡三保ノ松原・京都松尾神社・伊豆大仁・千葉館山・鳥取県東伯郡竹田村など極めて広範囲が舞台になる。  所在  京都府京丹後市
  • 点と線 — 著者の初めての長編推理小説で、時刻表トリックとしても草分けの作品であり、交通公社の雑誌『旅』に連載された。福岡県福岡市香椎の海岸に若い男女の情死体が上がった。心中した男女の旅立ちに、鎌倉の病床の妻を見舞う途中の東京駅でたまたま出くわしたと言う会社経営者の安田に刑事たちは疑いを抱くが、2人の死亡推定時刻に安田は青函連絡船・小樽経由で札幌にいたという鉄壁のアリバイがあった。舞台となった東京駅のホームはすでにないが、松本清張がこの小説を執筆した東京駅ステーションホテルはリニューアルオープンされ当時の時刻表が飾られている。  所在  福岡市/東区東京駅
  • 天保図録 — 長編時代小説。老中水野忠邦の改革の下で妖怪と恐れられた南町奉行・鳥居耀蔵の暗躍を描く。水野は奢侈禁止や物価統制・印旛沼の開拓・上知令を押し進め、鳥居は何人もの密偵を使い政敵の追い落としを図る。鳥居の前任の南町奉行は桑名に送られ、鳥居の密偵は長崎・三島・印旛沼に向かう。森鴎外らが描いた神田護持院ヶ原の仇討ちもこの流れの中にある。  所在  東京都千代田区、三重県桑名市長崎市、静岡県三島市、千葉県佐倉市
  • 天理研究会事件 — 『昭和史発掘』所収。大正から昭和にかけ天理教の信者である大西愛治郎は神懸かりとなり天理教の分派を作る。本人も信者も司直の前でも平気で天皇をないがしろにし弾圧をうけるが、信仰のために全く平気であった。戦後に大西と信者たちは釈放され宗教団体「ほんみち」を再建し、信仰の発祥の地である奈良県葛城郡当麻町には大西夫妻の墓がある。  所在  奈良県葛城市当麻町
  • 統監 — 伊藤博文の韓国駐留に付き添った新橋の芸者の視点で描く。置屋のある新橋から大磯の伊藤の邸宅さらに韓国に向かう途中の下関そして京城(ソウル)が舞台となる  所在  東京都港区新橋、神奈川県大磯町ソウル
  • 年下の男 — 結婚の遅れたOLは社内の年下の男と付き合い始める。しかし二人の仲は壊れかけ、女は男を高尾山に誘う。  所在  八王子市

な行[編集]

  • 内海の輪 — 『黒の様式』所収。考古学者江村宗三はかつての兄嫁と不倫していた。二人で有馬温泉と蓬莱峡を訪ね、後に江村は発掘でやはりこの地を訪れる。蓬莱峡の遺跡の記述に詳しい。  所在  神戸市西宮市
  • 波の塔 — 長編。新米検事の主人公は人妻と付き合い深大寺に行く。山梨の下部温泉に旅行し、台風で閉じ込められ雨の中を徒歩で富士宮に向かう。また一人で諏訪や佐渡にも旅行し、その情景も描かれる。またこの小説が富士の樹海を有名にしたともいわれる。  所在  東京都調布市、山梨県身延町富士河口湖町諏訪市佐渡島
  • 肉鍋を食う女 — 『ミステリーの系譜』所収の短編。日本で起こった3件の人肉食事件の実録だが、事実関係をいくつか変えている。主に扱われているのは群馬県で精神を病んだ日雇人夫の内妻が継子を殺した事件。それに正岡子規の友人の漢詩人・野口寧斎の義弟で麹町に住む野口男三郎が築地近くで起こした事件と、山梨県甲府近くの村で肉の行商をしていた女が夫を殺した後にその死体の肉を売ったと言われる噂を加えている。  所在  群馬県,東京都千代田区
  • 濁った陽 — 疑獄事件で相次ぐ中堅官僚らの自殺を取材する作家は、奇妙なほどガードの高い公団に疑いを抱く。事件は伊豆半島付近の川奈・伊東・熱海・真鶴で展開する。  所在  伊東市

は行[編集]

  • 花衣 — 美貌の女流俳人橋本多佳子をモデルにした小説。『菊枕』で杉田久女を書くために清張は彼女に会いに行った。三者とも小倉に住んでいた。  所在  北九州市
  • ハノイで見たこと — 1968年1月のベトナム戦争のさなか、北ベトナムからハノイ訪問の許可を得た清張の記録。プノンペン・ビエンチャンで足止めを食いながら何とかハノイ入りした後、市内や港町ハイフォン・高原地帯やホアビン市などを訪ね、街や博物館を見たり要人と会う。クライマックスにジョンソン米大統領が北爆中止を決め、北ベトナムが米との交渉開始を表明した翌日、清張はファン・バン・ドン首相に取材を行う。  所在  プノンペンビエンチャンハノイハイフォンホアビン省
  • 張込み — 清張の初めての推理小説とも言われる。東京で重役宅に入った強盗が捕まり、刑事たちはその共犯者を九州に探す。犯人のかつての恋人の家を張り込み、あるとき様子が違うことに気づくと、温泉まで女を追っていく。  所在  佐賀市
  • 晩景 — 牛乳瓶のカバーのかけ方の特許を考えた主人公は、それを勝手に使われたと大手メーカーを訴え東京地裁に通う。実話をもとにした創作。  所在  東京都千代田区
小倉城
  • 半生の記 — 清張の自伝。父の生まれた山陰の日南町と育った米子に始まり、清張が生まれたのちの下関や小倉での生活に話が及ぶ。小倉で清張は高等小学校卒業後に就職し、文学に親しむ。不況で解雇されたのちは印刷所で見習いとなり、ときに博多に移る。その頃かつて共産党関係の出版物を読んでいたかどで特高に挙げられる。その間に結婚するが、印刷屋の主人が亡くなったのを機に朝日新聞社の広告版下の作成の仕事に移る。朝日新聞の二十年の間に考古学好きの同僚に影響され遺跡回りをしたり、兵役に取られ朝鮮の街を歩いたり、復員後はアルバイトに箒の商売で西日本各地を歩き、その中で豊後高田の富貴寺や吉野を訪ねる。朝鮮戦争で小倉の街は騒がしくなっていた。生活費のために懸賞金が欲しくて応募した『西郷札』が入選し、三田文学に載せたり芥川賞を取り、上京し練馬に住むことになる。あちこちにその後の小説の人物や場面が登場する。  所在  島根県日南町米子市下関市北九州市韓国豊後高田市
  • ベイルート情報 — 実在の事件をもとにしたフィクション。主人公は商社員の案内でカイロ・アレクサンドリアを旅し、さらに別の機会にやはり同じ商社員の案内でベイルート・ダマスカスを旅して事件に巻き込まれる。ベイルート情報とはアラブ内の諸勢力の思惑が入り乱れて当てにならない情報とのこと。  所在  カイロアレクサンドリアベイルートダマスカス
  • 微笑の儀式 — 『黒の様式』収録の中編。定年を過ぎた法医学者が奈良の法隆寺で仏像を見ていると30代の男から話しかけれられる。微笑をたたえた仏像のひどく思い入れのある男で職業は彫刻家だと言っていたが互いに名乗らずに別れた。しばらく後に新聞で微笑の彫刻が展覧会の入選作になっていることを知った学者はそれを見物しに行くと、やはりその彫刻家であった。その像を見ているうちに別の男から話しかけられ、最近厚木で事故死した米兵の愛人によく似ていると言われる。  所在  奈良市厚木市
  • 火と汐 — 大学時代の友人の妻と不倫の関係になった劇作家は、その妻に求められ京都の大文字焼の見物に行くが、旅行中に女は突然失踪してしまう。同じ頃、夫の方はヨットレースで三宅島を回って真鶴岬の近くで事故を起こしていた。  所在  京都市三宅島・神奈川県真鶴町
  • 火の縄 — 戦国時代の弓木城主・一色義有に仕えていた鉄砲の名手・稲富治介の物語。義有は細川忠興にだまし討ちにされるが、稲富はその技術から召抱えられる。忠興が豊臣秀吉について連戦する中で忠興やその妻の玉と関わる。玉は明智の娘であったために山奥に幽閉され、後に秀吉に人質として細川家の大坂屋敷に置かれ、キリスト教に改宗し細川ガラシャ夫人と呼ばれるが、稲富はそれについて回る。  所在  京都府与謝野町京丹後市大阪市
  • — 短編集『黒い画集』収録の中編。多摩川の河川敷で男の絞殺死体が見つかった。殺された男は最近、危ない事業をするために大金を持って東京に来て、行方不明になっていた。ちょうど妻が捜しに上京し、死体が発見された日の朝に帰郷したことを刑事は気にする。小田急線和泉多摩川駅近く。  所在  東京都狛江市
  • 笛壺 — 地位も家も捨てて愛人の下に身を寄せる学者がその過去を振り返る。深大寺から物語は始まる。  所在  東京都調布市
  • 不安な演奏 — 主人公の雑誌編集者は趣味が高じて連れ込み宿の盗聴テープを集めることになる。その中で男同士の客が殺人の相談をしているらしいことに気付き、知人の映画監督と一緒に調べはじめる。監督の仕事が忙しくなったため監督の紹介で別の男と探偵をすることになるが、どうもその男の行動は信用ならない。事件は現職大臣の選挙違反に絡み、新潟県柏崎・都下布田・山梨県小淵沢・三重県尾鷲・静岡県川奈・大分県湯布院と展開する。  所在  柏崎市
  • 二つの声 — 『黒の様式』所収の中編。俳句の同人グループで軽井沢の別荘に野鳥の声の録音に行った4人は、録音の中に女の失踪に関わる声を見つける。  所在  軽井沢町
  • 二人の真犯人 — 『ミステリーの系譜』所収の実録もの。江戸時代に刑場のあった鈴ヶ森近くで遊女が殺され、以前に付き合っていた男が逮捕・起訴されたが、別の事件で捕まった男がその殺人を自供した。  所在  東京都品川区
  • 分離の時間 — 『黒の図説』所収の中編。主人公はたまたま乗ったタクシー運転手から、直前の老人客に売春を持ちかけられたことを聞く。すぐ後に殺された国会議員がその乗客ではないかと疑い、友人の雑誌記者とともに調べはじめ、老人客がタクシーに乗った京橋と降りた麻布市兵衛町を二人は歩く。  所在  東京都港区
  • 紅刷り江戸噂 — 江戸の時代物の短編集。町人たちの物語なので舞台は下町が多い。甲州街道・浅草・向島・両国・上野広小路など  所在  甲府市台東区墨田区
  • 謀略・朝鮮戦争 — 『日本の黒い霧』所収。朝鮮戦争の状況とそれに伴う米軍と日本について描く。  所在  韓国北朝鮮

ま行[編集]

  • 松川事件判決の瞬間、推理・松川事件 — 『日本の黒い霧』所収。福島市の南側で起こった実在の列車脱線事故について、米軍の陰謀と考え推理している。  所在  福島市
  • 万葉翡翠 — 『影の車』収録の短編。万葉集にある沼名川の玉とは、従来言われているような想像上の天上の川にある玉ではなく、実は日本にはないとされていた翡翠が新潟で産出したものではないか、と唱える助教授の説に従い、3人の大学生は候補となる場所を手分けして探検することになった。  所在  新潟県糸魚川市
  • 眼の壁 — 『点と線』と同じ時期に週刊読売に連載された長編。パクリ屋と呼ばれる手形取得詐欺から殺人事件に発展する。右翼団体の親玉が事件に関わり、事件は東京駅から府中競馬場さらに殺人犯人の逃亡先・岐阜県瑞浪市や故郷の長野県南佐久郡へと展開する。  所在  瑞浪市
  • 無宿人別帳 — 江戸の時代物の短編集。無宿人という戸籍のない人々の物語。犯罪と縁が深いため、小石川の人足寄場や牢のある伝馬町、遠島先の八丈島、逃亡先としての甲州街道などが描かれる。  所在  東京都中央区八丈島甲府市
  • 面貌 — ひょんなことから徳川家康付となった百姓の未亡人は茶阿の局として家康の子を生んだ。しかしその子は醜く、家康はこれを愛さない。成人して松平忠輝となっても父子は打ち解けず、琵琶湖畔の江州守山で問題を起こし、伊勢・飛騨・諏訪と流される。  所在  諏訪市
  • 「もく星」号遭難事件 — 『日本の黒い霧』所収の短篇。1952年に実在したもく星号墜落事件について、米軍の管制ミスとそれを糊塗する情報操作という立場で書かれている。もく星号は羽田から館山を通り、伊豆大島の三原山に墜落した。  所在  東京都伊豆大島

や行[編集]

  • 柳生一族 — 大和の国・柳生庄の弱小豪族である柳生氏は筒井順慶や豊臣秀吉らに翻弄されながらも、徳川将軍家の指南役となる。  所在  奈良市
  • 山師 — 甲斐の国出身の猿楽師が若い頃に聞いた金掘りの技術を手に徳川家康に仕え、佐渡金山・石見銀山の産出を急増させる。大久保長安の名を受け、さらに伊豆大仁金山を発見し、大名にまでなるが……。  所在  新潟県佐渡市、島根県太田市、静岡県伊豆市
  • 闇に駆ける猟銃 — 『ミステリーの系譜』所収。津山三十人殺しのドキュメント。一部事実関係を変えているらしい。観光に行くところではない。  所在  津山市
  • 歪んだ複写 — 新宿の冴えないバーで奇妙な行動をしていた客が武蔵境の畑の中で死体で見つかった。以前に部屋を貸していた者ではないかと大家から通報を受けた新聞記者は、被害者が元税務署員であることを突き止め税務署の汚職絡みの殺人の疑いを抱く。深大寺・吉祥寺・阿佐ヶ谷・平和島・五反田・大田区と東京の西部で事件は展開する。  所在  東京都武蔵野市

ら行[編集]

  • 落差 — 歴史学者である主人公は、戦中から戦後の政治状況の変化に合わせて巧みに変節しつつ、教科書の編集で儲けていた。彼は女たらしで、かつて交流のあった歴史学者の妻や友人の妻に手を出す。都内で物語は展開するが、最後は高知県に行き着く。ダム建設に伴う立ち退きでの裏取引や教科書採用に関する教職員のリベート要求などどきついテーマを扱っているためか、高知県での地名が高知市周辺以外は架空のものになっているが、それぞれモデルがあるようだ。  所在  高知県
  • 陸行水行 — 『別冊黒い画集』収録の短編。歴史学者が邪馬台国九州説を説く郷土史家に会い、彼の意見を聞くことから物語が始まる。魏志倭人伝の記述を読み解きながら、邪馬台国への道をたどる。  所在  宇佐市
  • 劉生晩期 — 画家岸田劉生の最後の5年余りの記録。関東大震災でそれまで住んでいた鵠沼の家を出た劉生は名古屋経由で京都に住む。しかし身勝手や人と打ち解けない性格から画壇で孤立した劉生は茶屋遊びに溺れまともな作品をなすこともなかった。一念奮起して鎌倉に移るがやはり新橋あたりで遊び歩く。最期は憧れのパリ行きの金策のために、満州鉄道からの招きに応じて大連に行き、帰りに立ち寄った弟子の故郷の徳山で臨終を迎える。  所在  京都市鎌倉市大連周南市
  • 連環 — 長編。九州で女を籠絡し金づるとした男は東京に舞い戻り、女と千葉の鋸山に行く。ロープウェイができたころが舞台となっており、石切場や五百羅漢を通って山を登り内房の海岸線を俯瞰する。  所在  千葉県富津市


わ行[編集]

  • 私のくずかご — オール読物に連載されたエッセイ集。オランダのスケフェニンゲンであった日系人のこと、下部温泉で没した三田村鳶魚 のこと、箱根や麻布の幽霊譚、講演で行った気仙沼や秋川渓谷など多彩な話題が続く。  所在  スケフェニンゲン身延町箱根町東京/港気仙沼市あきる野市

作品および作者に関わる各地[編集]

架空の地名

松本清張の作品では多くの実在の地名が使われているが、架空の地名が使われていることも少なくない。人口が多い場所であれば特に問題ないのかもしれないが、小さな村などで殺人事件が起こったなどという設定は住人に遠慮があるのだろう。例えば『田舎医師』の島根県仁多郡葛城町・『犯罪広告』の南紀の阿夫里町・『家紋』の石川県の柴山潟近くのF村などだ。これらはいずれも実在しないが全くの虚構と言うわけでもなく、ウェブ上には地元の人たちがそこに描かれた情景の特徴に心当たりがあるような記述が見つかったりする。やはりリアリティを増すために実際にはそのまま使えなくても取材はしてあるようだ。

この項では各地の地名に関わる作品や作者について紹介している。作品についてはある程度以上の存在感で登場している土地のみを扱い、名前が出ていても軽いものは載せていない。

北海道[編集]

  • 札幌 — 『日本の黒い霧』所収の中篇『白鳥事件』で事件は市街と近郊で起こる。  所在  札幌市

東北[編集]

青森県[編集]

岩手県[編集]

宮城県[編集]

秋田県[編集]

  • 横手 — 『戦国権謀』で徳川家康に仕えた本多正純は秀忠や土井利勝に嫌われ、出羽の国・由利本庄や横手に流される。  所在  横手市

山形県[編集]

  • 五色温泉・宗川旅館 — 『昭和史発掘』所収の『三・一五共産党検挙』で、大正15年(昭和元年)の暮れこの旅館で非合法化された共産党再建の秘密会議がもたれた、とされる。  所在  米沢市

福島県[編集]

  • 松川町 — 『日本の黒い霧』所収の『推理・松川事件』および『松川事件判決の瞬間』の事件現場。  所在  福島市

関東[編集]

茨城県[編集]

栃木県[編集]

群馬県[編集]

  • 高崎市 — 『古代探求』付論において群馬の古墳群を扱う。  所在  高崎市

埼玉県[編集]

  • 平林寺 — 短編『月』で老教授と学生が別れるときにこの寺を歩く。  所在  埼玉県新座市

千葉県[編集]

  • 印旛沼 — 長編時代小説『天保図録』で、老中水野忠邦の進める印旛沼開拓は泥沼化し、密偵や代官や奉行が入り乱れる様子が描かれる。  所在  佐倉市
  • 鋸山 — 長編『連環』でロープウェイができたころに主人公たちはここに訪れる。  所在  富津市

東京都[編集]

  • 麻布市兵衛町 — 『黒の図説』所収の中編『分離の時間』で殺された国会議員ががタクシーを降りた場所。  所在  東京都港区
  • 五日市街道・吉祥寺 — 『死の枝』収録の短編『交通事故死亡1名』で事故を起こしたタクシーが走っていた場所。作中ではI街道とあるが、五日市街道のことと思われる。清張自身が近くに住んでいた。  所在  武蔵野市
  • 井之頭 — 短編『皿倉学説』で老教授がここに住み近くを散歩する。  所在  三鷹市
  • 江古田 — 『小さな旅館』娘婿を殺すため主人公は江古田の連れ込み宿を買い取って死体遺棄の現場にする。  所在  東京都中野区
  • 青梅 — 短編『種族同盟』で多摩川上流の渓谷がバーのホステスの殺害現場となる。  所在  青梅市
  • 江戸各地 — 1.短編集『無宿人別帳』・『彩色江戸切絵図』・『紅刷り江戸噂』では江戸の下町の各地が舞台となる。2.長編『かげろう絵図』や『天保図録』では江戸城や麻布や青山など武士の領域が舞台となる。  所在  東京都
  • 五反野 — 『日本の黒い霧』所収の中篇『下山国鉄総裁謀殺論』で扱われた実在の下山事件の現場で、常磐線の北千住・綾瀬間にあり東武の架線と交差している場所。いまも追憶碑がある。  所在  東京都足立区
深大寺門前
  • 深大寺 — 1.『波の塔』で主人公二人が密会する。清張はここで執筆したらしい。2.『喪失の儀礼』で経堂の外科医が殺される。 3.『笛壺』において地位も家も捨てて愛人の下に身を寄せる学者がここでその過去を振り返る。清張は近くの高井戸に住みここを好んでいたようだが、その変化に当惑もしている。  所在  東京都調布市
  • 善福寺川 — 長編『黒の福音』でスチュワーデスの死体が発見された場所。実在の事件をモデルに小説にしているため、架空の地名が使われているが、たとえば中央線O駅(荻窪駅)・玄伯寺川(善福寺川)・高久良(高井戸)などと対応がつく。  所在  東京都杉並区
  • 高尾山 — 『死の枝』収録の短編『年下の男』は高尾山が最後のキーになる。  所在  八王子市
  • 多摩川 — 短編集『黒い画集』収録の中編『紐』で男の絞殺死体が見つかった場所。  所在  狛江市
  • 椿山荘 — 『象徴の設計』の中で、明治の軍人・山縣有朋が建てた屋敷で今も残っている。  所在  文京区
  • 帝銀椎名町支店 — 実在の事件を基にした『小説帝銀事件』の舞台。すでに支店はない。  所在  豊島区
  • 中野 — 短編『証言の森』で中野の住宅街の主婦が殺される。  所在  中野区
  • 丸の内 — 『霧の旗』で主人公の女性が弁護を頼みに行く事務所がある。まだ赤レンガの建物が立ち並ぶ時代を描いている。  所在  千代田区
  • 三原山 — 『日本の黒い霧』所収の短篇『「もく星」号遭難事件』で飛行機はこの山に墜落する。  所在  伊豆大島
  • 三宅島 — 『火と汐』で主人公の女の夫がヨットレースでここを通る。  所在  三宅島
  • 武蔵境 — 『歪んだ複写』の事件の発端で、死体が見つかる。  所在  東京都武蔵野市
  • 代々木山谷 — 『聞かなかった場所』で主人公の妻はここで急死し、主人公は付近を調べ始める。かつて代々木に山谷という地名があり、連れ込みホテル街だった。  所在  東京都渋谷区

神奈川県[編集]

  • 観音崎 — 『球形の荒野』でクライマックスを迎える場所。  所在  横須賀市
  • 相模湖 — 1.『時間の習俗』の事件の発端となった場所。2.『小さな旅館』で主人公はここで偽装工作をする。  所在  相模原市
  • 湘南 — 『別冊黒い画集』収録の『断線』はこの一帯から始まり、終局を迎える。  所在  鎌倉市,藤沢市,横須賀市

中部[編集]

新潟県[編集]

  • 小滝川ヒスイ峡 — 『万葉翡翠』の玉の発見場所。  所在  糸魚川市
  • 柏崎 — 『不安な演奏』で連れ込み宿の盗聴テープで、男同士の客が死体を捨てる場所として相談していた場所。中に死体をおいておくと満潮時に海に流される洞窟があると聞き、映画監督が調べにいく。  所在  柏崎市
  • 佐渡島 — 1.『波の塔』で主人公の新米検事が旅行に行き、おけさ踊りや古代遺跡などを見る。 2.『山師』で甲斐の国出身の猿楽師が金掘りの技術を手に徳川家康に仕え、佐渡金山・石見銀山の産出を急増させる。大久保長安の名を受け、さらに伊豆大仁金山を発見する。  所在  佐渡島

富山県[編集]

石川県[編集]

  • 金沢および能登 — ゼロの焦点の舞台で主人公の夫の失踪や続く殺人事件が金沢・能登金剛・鶴来などで展開する。  所在  石川県

福井県[編集]

山梨県[編集]

  • 塩山 — 『別冊黒い画集』収録の短編『形』の舞台。  所在  甲州市
  • 下部温泉 — 長編『波の塔』で主人公の新米検事が人妻と訪れ、台風のため閉じ込められる。  所在  身延町
  • 樹海 — 長編『波の塔』で自殺の名所として有名になってしまったとも言われる。  所在  富士河口湖町
  • 湯村温泉 — 1.作者が好んで訪れ執筆した。2.『ゼロの焦点』で主人公が新婚旅行に訪れた地。  所在  甲府市

長野県[編集]

  • 鹿島槍ヶ岳 — 短編集『黒い画集』収録の中編『遭難』で主人公たちが登る山。  所在  大町市
  • 軽井沢 — 『黒の様式』所収の中編『二つの声』の舞台。  所在  軽井沢町
諏訪湖
  • 諏訪 — 1.『波の塔』で新米の検事が竪穴住居に泊まる。 2.『湖畔の人』で人と打ち解けない新聞記者はここに転勤となり、かつてこの地に流されたやはり人から愛されなかった徳川家康の子・松平忠輝に思いを致す。 3.『面貌』は醜いために家康に愛されなかった松平忠輝の話。琵琶湖畔の江州守山で問題を起こし、伊勢・飛騨・諏訪と流される。  所在  諏訪市
  • 南佐久郡 — 『眼の壁』の殺人犯の故郷。
  • 富士見町 — 短編『たづたづし』官庁の課長である主人公は不倫相手を始末するためにここに誘う。  所在  長野県富士見町

岐阜県[編集]

  • 瑞浪市 — 『眼の壁』の殺人犯の逃亡先。  所在  瑞浪市

静岡県[編集]

  • 天城峠 — 短編集『黒い画集』中の『天城越え』の舞台。下田の家から家出した少年が静岡に向かう途中に通る。  所在  伊豆市
  • 伊豆大仁金山 — 『山師』で甲斐の国出身の猿楽師が金掘りの技術を手に徳川家康に仕え、佐渡金山・石見銀山の産出を急増させる。大久保長安の名を受け、さらに伊豆大仁金山を発見する。  所在  伊豆市
  • 伊豆長岡ほか — 長編『彩霧』で主人公は銀行を脅迫した友人たちを追跡して伊豆半島西部にたどりつく。  所在  伊豆半島
  • 川奈 — 短編集『黒い画集』中の『濁った陽』で事件の発端となる自殺があったところ。続く事件も近辺の熱海・真鶴などで起こる。  所在  伊東市
  • 船原温泉 — 『青のある断層』において、画商がかつてパトロンとなって育て大家となるも才能が枯渇した画家を訪ね、最近買った無名画家の絵を見せ御狩場焼を相伴する。  所在  伊豆市

愛知県[編集]

近畿[編集]

三重県[編集]

  • 桑名城 — 長編時代小説『天保図録』で、南町奉行・矢部駿河守は鳥居耀蔵の陰謀で追い落とされ、桑名藩に幽囚の身となった様子が描かれる。  所在  桑名市

滋賀県[編集]

  • 琵琶湖 — 短編『粗い網版』で特高刑事がアジトを構え、新宗教に対する工作を行う。  所在  大津市

京都府[編集]

  • 木津温泉 — 長編推理小説『Dの複合』で作家らが初めて取材に訪れた場所。清張自身がここに滞在してこの作品を執筆し、その宿には当時の部屋がそのまま残されている。  所在  京丹後市
  • 京都 — 『劉生晩期』で画家岸田劉生は関東大震災で京都に移り、茶屋遊びに明け暮れる。  所在  京都市
  • 大文字焼 — 『火と汐』で主人公の不倫カップルが女の夫の不在中に京都に見物に行く。  所在  京都市
  • 鷹峯 — 短編集『小説日本藝譚』の本阿弥光悦を扱った短編の中で、光悦が徳川家康からこの地を拝領し自らがプロデューサーとなって一大芸術家村としている様子が描かれる。屋敷跡は光悦寺として残っている。  所在  京都市

大阪府[編集]

兵庫県[編集]

  • 有馬温泉・蓬莱峡 — 『黒の様式』所収『内海の輪』でキーとなる。主人公は考古学者でこの地での遺跡の記述が詳しい。  所在  神戸市西宮市

奈良県[編集]

  • 唐招提寺 — 『球形の荒野』で物語の始まりとなる場所。  所在  奈良市
  • 奈良 — 『古代探求』では古事記・日本書紀について広範な検討を加え、付論において高松塚壁画や聖徳太子さらに万葉を論じる。  所在  奈良県
法隆寺
  • 法隆寺 — 1.『黒の様式』収録の中編『微笑の儀式』で始まりとなる場所。飛鳥時代の微笑をたたえた仏像の記述が和辻哲郎『古寺巡礼』を引用するなど詳細にわたる。2.『小説日本藝譚』の中で止利仏師の作品を訪ねる。  所在  斑鳩町
  • 柳生庄 — 『柳生一族』でこの地を領地とした一族は戦国の時代に翻弄される。  所在  奈良市


和歌山県[編集]

中国・四国[編集]

山陰

清張の父は山陰出身で幼い清張に故郷のよさを繰り返し聴かせたそうだ。そのためか山陰が舞台になる作品は多く、著名な『砂の器』などは代表例となっている。一家は貧しく父は故郷に帰れなかったようだが、清張自身は小説家となってから父の故郷を訪ね、それがまた作品となっている。コラム外側にある小説の舞台のリストを見渡すと、やはりこの山陰や清張が若いころ過ごした北九州や上京してから住んだ東京都下が多いことがうかがえる。

鳥取県[編集]

  • 日南町 — 清張の自伝『半生の記』で父の生まれた場所で清張は父から故郷のことを口癖のように聞いた。  所在  日南町

島根県[編集]

  • 出雲 — 『古代探求』で古事記・日本書紀について広範な検討を加える。  所在  出雲市
  • 仁多郡 — 1.砂の器に登場する。作中の「カメダ」という言葉から亀嵩(かめだけ)(現・奥出雲町)が現れる。ちなみに亀嵩駅は「出雲そば店のある駅」としてファンが多い。2.田舎医師に登場する。作中の葛城村と言うのは架空だが、実在の地名もちらほら表れる。

岡山県[編集]

広島県[編集]

山口県[編集]

徳島県[編集]

香川県[編集]

愛媛県[編集]

  • 宇和島 — 『梟示抄』において征韓論・佐賀の乱に敗れた江藤新平が政府軍から逃げ回り、ここから徒歩で高知に向かおうとするが山中を一晩駆け回って元の場所に戻ってしまう。  所在  宇和島市

高知県[編集]

  • 高知県 — 長編『落差』で登場人物たちは高知県の各地に引き寄せられクライマックスを迎える。  所在  高知県

九州・沖縄[編集]

福岡県[編集]

小倉

清張は子どもの頃に小倉に転居し、途中間をはさみながらも40を過ぎて東京に転居するまで小倉で暮らした。そこで北九州を舞台にした作品は多いし、森鴎外や杉田久女や橋本多佳子など小倉にまつわる人々の話も多い。自伝である『半生の記』では小倉の各地が描写されるし、出世作となった『或る「小倉日記」伝』では主人公の田上耕作が鴎外の旧跡を訪ねて小倉の街を歩き回る。現在では小倉に清張の記念館がある。

  • 香椎 — 『点と線』の重要な舞台。心中した2人は国鉄香椎駅から西鉄香椎駅を通って海岸に至る。西鉄の駅前に当時をしのぶ清張桜が移植されている。現在は埋め立てで、香椎駅から海岸に行くにはイオンモール香椎浜あたりまで行かなければならない(徒歩20分。9月の花火大会の会場である)。  所在  福岡市
  • 小倉 — 1.『菊枕』においてモデルである女流俳人が住んでいた。 2.『花衣』で美貌の女流俳人橋本多佳子が住んでいた。3.清張の自伝『半生の記』では、清張はここで育ったとある。途中間があるが上京まで多くの時間を過ごした。  所在  北九州市
  • 松本清張記念館 — 清張を記念する市立の博物館。清張の家が再現されている。  所在  北九州市/小倉北区  WEB  [1]
  • 京都(みやこ)郡近辺 — 短編集『黒の図説』中の『鴎外の婢』で文芸評論家が鴎外の女中の一族を追ううちに、付近の古代帝都論に関わる土地を訪ね歩く。  所在  行橋市
  • 和布刈(めかり)神社 — 『時間の習俗』で容疑者がアリバイ作りに利用した。清張の文学碑が建っている。  所在  門司市(現・北九州市/門司区

佐賀県[編集]

  • 神埼市 — 1.清張の妻の出身地で自身も戦後の一時期住んだことがある。2.短編集『黒い画集』中の『凶器』の舞台。原作では架空の地名が使われているが、清張自身が方言などここに住んでいた時のものを使ったと記している。藁ほうき作りが題材にあるが、清張自身が藁ほうきの仲買いをしていたらしい。  所在  神埼市
  • 佐賀市 — 清張の初めての推理小説とも言われる『張込み』の舞台。強盗を追って刑事たちは九州を探す。小説中では似た名前の温泉地があるだけで地名は特定されないが、映画はここが舞台となった。  所在  佐賀市

長崎県[編集]

  • 長崎 — 長編時代小説『天保図録』において、長崎に育ち海外事情に詳しい砲術家の高島四郎大夫は、国学者の家の出身の南町奉行・鳥居耀蔵に嫉視され、密偵本庄茂平次を送り込まれる。  所在  長崎市

熊本県[編集]

  • 阿蘇山 — 阿蘇山の噴火口への自殺者を引きとめる話『情死傍観』の舞台。  所在  阿蘇市

大分県[編集]

  • 宇佐 — 『別冊黒い画集』収録の短編『陸行水行』の物語の始まりの場所。市内の安心院には清張の文学碑が建っている。  所在  宇佐市

宮崎県[編集]

  • 可愛岳(えのだけ) — 『西郷札』において佐土原藩士の樋村雄吾は西南戦争で西郷軍に従うが、この地で負傷し脱落する。  所在  宮崎県延岡市

鹿児島県[編集]

沖縄県[編集]

海外[編集]

海外

清張は戦争で韓国にいたことを除けば50を過ぎて初めて海外に行った。ヨーロッパから中東にまで足を伸ばし旅行記や作品にしている。キューバに行けばカストロ政権の要人に取材を試みたり、ベトナムに行っては北ベトナムの要人に取材を行った。イラン旅行では古代を訪ね『ペルセポリスから飛鳥へ』が出版され、取材中にはイラン革命にいたる暴動にも遭遇した。その後もインドに取材したり、ヨーロッパ各地に訪れた。

東アジア[編集]

  • 全羅北道(韓国) — 1.短編集『絢爛たる流離』の中の『百済の草』『走路』の舞台。帝国日本時代の朝鮮駐屯軍の話で、作者自身が兵役中に朝鮮にいたことから題材を取ったと考えられる。 2.『赤いくじ』の舞台。太平洋戦争末期に駐屯する軍の高級将校たちが醜態を繰り広げる。かつて清張がここにいた時の様子が描かれる。  所在  全羅北道
  • ソウル(韓国) — 1。『北の詩人』で金日成政権に粛清された詩人・林和が第2次世界大戦直後のソウルを駆け回る。2.『統監』で伊藤博文が駐留し政務を執る。  所在  ソウル

東南アジア[編集]

キャメロン高原に広がる茶畑
  • ハノイ(ベトナム) — 1968年1月のベトナム戦争のさなか、北ベトナムからハノイ訪問の許可を得た清張の記録『ハノイで見たこと』で様子が描かれる。  所在  ハノイ
  • キャメロン高原(マレーシア) — 1967年に起こったタイのシルク王、ジム・トンプソンの失踪事件をモチーフにして書かれた長編推理小説『熱い絹』の舞台となった、マレー半島中央部に位置する高原(小説の中では「カメロン・ハイランド」という地名表記になっている)。執筆にあたって著者が綿密な取材旅行をしたらしく、小説の中に登場するタナラタブリンチャンなどの高原内の町や高原に広がる茶畑の描写などが秀逸で、単なる推理小説を超え、キャメロン高原の良質な旅行記、あるいはガイドとしても楽しむことができる(小説を読んでから現地を訪れても、あるいは現地を訪れてから小説を読んでも、倍の楽しさを味わうことができる)。  所在  キャメロン高原
  • ビエンチャン(ラオス) — 1969年にラオスの首都ビエンチャンで展開する、ドキュメンタリータッチの推理小説、『象の白い脚』の舞台。隣国の首都ホーチミンやバンコクに比べ、のどかだが活気がなく、田舎くさい当時の町の様子が「どこか咲き損ねの隠花植物のよう」と表現されている。  所在  ビエンチャン


中近東[編集]

  • 死者の町 — 『砂漠の塩』で主人公の二人が観光で訪れる。  所在  エジプトカイロ
  • ルトバ — 『砂漠の塩』で主人公の二人が滞在する。  所在  イラク

ヨーロッパ[編集]

  • アムステルダム(オランダ), ブリュッセル(ベルギー) — 『黒い福音』所収の中編『アムステルダム運河殺人事件』では、ブリュッセルの商社員の死体がアムステルダムで見つかる。  所在  アムステルダム,ブリュッセル
  • セント・アンドリュース(イギリス) — 『黒い福音』所収の短編『セントアンドリュースの事件』では会社経営者の主人公たちはゴルフ発祥の地と言われるセント・アンドリュースを訪れる。  所在  セント・アンドリュース


この記事「松本清張の文学を訪ねる」は、この土地を旅したり、あるいは調べたりする際の参考になる可能性はあるものの、まだ書きかけです。加筆や訂正などをして下さるみなさんを求めています。